福利厚生について
就職、転職するとき給与と同様に気になるのが、社会保険への加入や交通費支給など、企業の福利厚生制度の状況です。特に派遣社員として仕事を始める方は、派遣先企業の福利厚生制度を自分が利用できるのかどうかも気になるところでしょう。
福利厚生とは、企業が従業員に支給する通常の給与以外の報酬のことで、従業員の家族を対象とした制度もあります。人材確保を目的に始まった制度ですが、最近では、育児・介護への支援サービスや余暇の充実など、従業員のワークライフバランスに配慮した制度を取り入れている企業も見られます。
派遣社員として働く前にあらかじめ知っておきたい福利厚生の概要や、公的制度の主なポイントをご紹介します。
福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生がある
福利厚生は「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」に大きく分けられます。
法定福利厚生には、厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険などの社会保険と、児童手当拠出金があります。これらは企業が実施しなければならない福利厚生で、保険料の一部または全部を企業が負担することになっています。
これに対し法定外福利厚生は、各企業の判断で実施する制度やサービス提供で、交通費支給、家賃補助、育児・介護支援、資格取得支援、勤労者財産形成貯蓄の実施、社員食堂や企業内託児所の設置、レクリエーションの実施などがあります。仕事を継続するためには、働きやすい職場環境であることも大事です。仕事を探す際は、企業の福利厚生の状況も確認するようにしましょう。
派遣社員の社会保険(法定福利厚生)の手続きをするのは派遣会社
社会保険は、私たちが高齢、傷病、介護、失業、労働災害などのリスクに遭遇したときに、その生活を保障するための公的保険制度です。厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険の5制度があり(法定福利厚生)、雇用主と雇用者が保険料を出し合っていますが、介護保険料については40歳以上の雇用者と雇用主、労働者災害補償保険については雇用主のみが負担することになっています。
派遣社員については、派遣会社(派遣元)が雇用主ですので、社会保険の加入手続きは派遣会社が行うことになります。
ここで、注意しなければならないのは、社会保険には各制度を利用するための加入要件が定められていることです。その概要をご紹介します。
厚生年金保険・健康保険・介護保険の加入要件
次のいずれにも当てはまることが必要です。
◆1週間の所定労働時間が通常の労働者(無期雇用フルタイム)の4分の3以上であること
◆雇用契約期間が2か月と1日を超えること
◆加入時の年齢が以下のとおりであること
健康保険…75歳未満
厚生年金保険…70歳未満
介護保険…満40歳以上65歳未満
なお、次の要件を全て満たす短時間労働者については、厚生年金保険・健康保険・介護保険が適用されます。
◆1週間の所定労働時間が20時間以上であること
◆1か月当たりの所定内賃金(賞与、残業代、通勤手当などは含まない)が88,000円以上であること
◆雇用期間の見込みが1年以上であること
◆学生でないこと ※夜間・通信・定時制の学生は対象となります。
◆以下のいずれかに該当すること
①社会保険の被保険者数が501人以上の企業で働いている
②社会保険の被保険者数が500人以下の企業で働いており、短時間労働者が社会保険に加入することについて労使で合意がなされている
雇用保険の加入要件
雇用保険の適用事業所に雇用され、次のいずれにも当てはまることが必要です。
◆1週間の所定労働時間が20時間以上であること
◆ 31日以上の雇用見込みがあること
労働者災害補償保険
契約期間に関わらず、派遣先での就業開始時点から適用されます。
事前にチェック!企業によって異なる法定外福利厚生
企業の法定外福利厚生で多く見られるのは、住居、食事、健康に関する制度で、社宅あるいは借り上げ社宅の提供、住居費の一部支給、社員食堂の運営、法定外健康診断の費用補助などが行われています。
この他、交通費の支給、作業服などの購入費補助、提携する飲食店などで使用できる食事券の提供、育児・介護サービス利用の援助、企業内託児所の設置、勤労者財産形成貯蓄の実施、トレーニングジムなど健康増進施設との提携・利用促進といった多様な福利厚生制度があり、その実施状況は企業によってさまざまです。
派遣社員として働く場合は、派遣元である派遣会社と、就業する派遣先企業それぞれの福利厚生制度の内容や対象者を事前に確認しておきましょう。
派遣先企業の福利厚生施設の利用について
労働者派遣法が改正され、2020年4月から、派遣労働者の待遇について通常の労働者(無期雇用フルタイム)との公正な取り扱いが求められるようになっています。
福利厚生については、派遣先企業が実施すべき次の措置が定められました。
◆派遣先の労働者が利用する「給食施設」「休憩室」「更衣室」については、派遣労働者に
対しても利用の機会を与えること
◆派遣先企業が設置・運営し、同企業の労働者が通常利用している物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設等の施設について、派遣労働者が利用できるように配慮すること
利用可能な福利厚生制度を活用しよう
ワークライフバランスをとりながら派遣社員として安心して働き続けるには、仕事の内容や給与のみならず、福利厚生も大事な要素です。特に、けがや病気、失業、老後などに備える社会保険については、加入要件などを事前に把握した上で就労時間を決めることが大事です。
また、各企業で実施されているさまざまな福利厚生制度や施設には、派遣社員も利用できるものがあります。その内容や対象者を確認し、利用できる制度を活用しながら仕事と生活の充実を図りましょう。