U・Iターン

北陸への移住 メリット・デメリット


地方創生が唱えられる中、人口減少に歯止めがかからない自治体は少なくありません。その対策として都市圏からの移住者を増やそうという取り組みが行われ、北陸3県においても移住者への経済的支援制度などを創設しながらU・Iターン促進事業が展開されています。
富山・石川・福井の北陸3県は、固有の産業や歴史文化などを有しながらも、気候・風土や生活スタイルなどにおいて共通点も数多く見られます。そして、それらの中には暮らしやすさと暮らしにくさの両面を持つものもあると考えられます。
北陸3県で暮らすメリットについて、デメリットの部分も交えながらご紹介します。

豊かな自然が身近にある

日本海に面する一方、「立山」が位置する飛騨山脈や、「白山」に代表される白山山地の一角をなす北陸3県は豊かな自然に恵まれています。国定公園雨晴海岸、中部山岳国立公園、能登半島国定公園、白山国立公園、越前加賀海岸国定公園など海や山に親しめるエリアが広がり、四季の変化を感じながら、海水浴やキャンプ、登山、釣りなどを楽しむことができます。自然と触れ合えるスポットが身近にあり、日常の中で気軽にリフレッシュできるところが富山・石川・福井の魅力です。

イメージされているほど寒冷ではない。雪は備えて楽しむ

北陸3県について「本州の北」というイメージを持っている方もおられますが、実際は本州の中央に位置しています。気温についても、日本海を北上する対馬暖流の影響を受けるため、冬期の気温は東北や本州内陸部より高くなっています。
豪雪地帯といわれ、実際に大雪となる年もありますが、近年は暖冬傾向で、積雪も少なめのシーズンが増えています。
一方、地方の暮らしは車依存度が高く、北陸3県も同様のため、車を運転する場合冬タイヤは必須で、雪道の運転も慣れるまでは不安が伴うでしょう。北陸移住のネックの一つが雪だと考えられ、生活のさまざまな面に影響があるため、車対策を含めた備えが必要となります。
とはいえ、雪は大変なことばかりではありません。雪だるま作りや雪合戦に子どもたちは大喜びですし、風情ある雪景色は冬の醍醐味の一つでもあります。北陸の冬は、雪に対する備えと発想の転換で楽しみながら乗り越えることができるでしょう。
なお、北陸3県は地震や台風の被害が少ない地域です。気候変動の影響といわれる昨今の大雨や、地震の頻発もあり油断はできませんが、過去の統計などからは、台風災害や大地震の発生は少ない地域といわれています。

上質な水と山海の幸に恵まれた食材の宝庫

冬、山に積もった雪はやがて水となり大地を潤します。豊富な水に恵まれた北陸3県は良質米の産地であり、また、水と米を生かした酒造りも盛んな土地柄です。
なし、りんご、ぶどう、いちじく、梅、メロンなどの産地でもあり、果樹園などでの収穫体験も楽しむことができます。
また、北陸といえば日本海から揚がる魚介の宝庫です。新鮮な海の幸を日常に食べられるのは都会ではなかなかできない贅沢といえます。
新鮮な食材が身近なところで安価に入手できることは、北陸で暮らす大きな魅力の一つです。

三大都市圏への往来がしやすいポジションにある

本州の中央部に位置する北陸3県は、東京・大阪・名古屋からの距離に大きな差がありません。近いとはいえませんが、北陸新幹線、JR在来線、高速道路、飛行機が利用でき、どの都市と行き来するにも遠いという負担感は少なく、地方に住みながら都市圏との仕事や生活のつながりを持っていたい方にとってはメリットのある地域だと考えられます。

費用はかかるが、自家用車はあった方が便利

実際に生活するに当たっては、バスや電車などの利用が不便な地域があるため、自家用車があった方が便利です。郊外にある公共施設や商業施設などを訪れる際も、効率的なのはやはり車です。しかし、それまで車を使わず生活されていた方にとっては、購入や維持管理のための費用が発生しますので、事前に検討すべき重要事項となります。
経済的にはデメリットを感じる車ですが、行動範囲が広がり、休日にドライブや観光を楽しめることなどを考えれば、生まれるメリットは大きいと思われます。

有効求人倍率が高いなど、雇用環境が安定している

北陸3県も含め、地方は都市圏に比べ企業の数が少なく、芸術文化に触れることができる施設や機会も少ないのが現状です。特に芸術文化については、オンラインでさまざまな情報が得られるようになったとはいえ、リアルな体験という点では物足りないと感じ方も多いでしょう。
しかし、仕事の面においては3県とも有効求人倍率が高く、雇用環境が安定しているのが特徴です。正社員で働く人の割合も高く、安定した生活へとつながっています。生活を支える仕事の機会が多いのは、現役世代にとって大事なポイントといえるでしょう。

持ち家率の高さが示すゆとりある住環境

移住者に不可欠なのが住まいですが、北陸3県は住環境が良いことでも知られています。持ち家率が高く、1室あたりの面積も広いという調査結果から、ゆとりある住宅が多いことが伺えます。空き家を移住者の家として活用するケースもあり、戸建てに住む場合は、余裕ある空間で暮らせる可能性が高いといえます。また、家賃が都市圏より安く、住居費の負担が少なくて済むのも大きなメリットの一つです。

子育てや教育環境が充実している

子育て世代が移住に当たって重視するのが、保育施設や子育て支援サービス、学校教育などの状況です。北陸3県は保育園の待機児童が少なく、さらに保育料の無料化や子どもの医療費助成を実施している自治体が多いなど、都市圏に比べ子育てしやすい環境が整っています。一時預かりや育児相談などのサービスも行われ、地域の人が子育て世代を支援する取り組みなども行われています。
学校教育に関しては、北陸3県の小・中学生は文部科学省が実施している「全国学力テスト」の正答率が高く、2019年度のランキングは、石川県が秋田県と同率1位、福井県3位、富山県4位でした。大学や専門学校など進学先が多いのは都市圏ですが、学校教育も含め、子どもの学習環境が充実しているのが北陸3県といえるでしょう。
また、先にご紹介した豊かな自然環境も、子どもを伸び伸び育てたい、いろいろな体験をさせたいという親御さんには大きな魅力となっています。

地域のつながりが生きている

子育て支援だけでなく、住民総出の清掃やイベントなどの行事を通して地域と関わることが多いのも地方の特徴で、これは北陸3県においても同様です。地域によっては昔から続く固有の習慣や住民同士の付き合いがあり、都市部で生まれ育った方には違和感が強いものもあるかもしれません。
最初は地域との関係を煩わしく感じるかもしれませんが、このような人と人とのつながりの根底には助け合いの精神があります。災害や急病のときに頼れる人が近くにいるのは心強いことといえます。移住された方の中には地域の人々との交流を深め、新たな楽しみを見出している方もおられます。
北陸3県のみならず、地方への移住を検討される際には、日常生活における地域との関りについても念頭に置きましょう。


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